切子の技術を習得する上で最も難しいと感じるのは、シンプルなカットです。直線一本でさえ、余計なことを考えていると真っ直ぐ引けなくなることがあります。中でも特に苦労したのがカマボコカットでした。力加減やガラスの持ち方、ホイールを当てる位置が少しでも変わると、隣のカマボコカットと違う形に仕上がってしまいます。そうなるとすべてのカマボコカットが同じ形になるまで、修正に修正を重ね、延々と直し続けることになります。先輩から助言してもらってもなかなか身にならず、悔しくて、始業前や休み時間にいつも練習していました。それでも上手くいかず、しばらくの間は別の作業を担当していました。
ある時、久しぶりに挑戦してみると、スッと綺麗にカットできるようになっていました。いつの間にか自分の中で技能が昇華していたのです。詰まる所、技能・技術の向上に近道はなく、ただ地道に積み重ねてきたものが少しずつ自分の糧になるのだと、その時に感じました。
こうして習得してきた技を駆使し、手間暇かけて製品を作ることに、私は大きなやりがいを感じますし、お客様が「買って良かった」と思えるように、時間が掛かろうと、一つ一つを丁寧に仕上げるように心がけています。